72.7×60.6cm
Oil on Canvas
彼女にお会いしたきっかけは友人の紹介だった
男性で女装する方ということで興味を持った
最初に見たのは、教えてもらったInstagramの画面の中
セクシーだ
フリルの目立つ下着、挑発的なポーズ、上目遣い、綺麗な顔立ち
コンタクトを取り、絵のモデルをお願いした
快諾してくれた
さあ、そこから頭を悩ませる
どういう場所なら彼女はリラックスしてくれるだろうか
どういうポーズが彼女らしいのだろうか
どんな服装をお願いすればいい?ヌード?
撮影の予定日をにらみ、日々考え続けた
ヒントは彼女のInstagramにあった
結局、人が来ない廃ビルの部屋で
下着姿で撮ることにする
彼女は下着が制服だ、そう感じたのだ
イメージしたポーズもあるが果たしてモデルさんの自然に合うのだろうか
好きに動いてもらうことにした
実際お会いしてみたら身長の高く
すらりとして、いい香りがしそうな方だった
緊張をほぐしたく、カフェで一息つく
お話ししていると、年代が近いのだろうか、話しやすい
友人のようだった
撮影会場についた
プライバシーを損なわないよう、自分は表に出て、部屋で着替えてもらった
思ったより時間がかかる
どうしたかと思い声をかける
返事を受けてはいると、新しい下着に苦戦している様子だった
マゼンダのブラにガーター一式
直視することが憚られ、撮影に集中するために会場の設置に意識を向けた
春なのに十分に暑い
本当は聖書の新しい解釈の作品構想があった
しかしポーズをとってもらおうと思うと、作為的なようで恥ずかしい
やはり彼女のしたいことをしてもらおう
自由に動いてくれる
その動きを追うと、室内に入る光線を受けた筋肉の作る影が美しい
髪を溶かす仕草
窓の外を眺める様子
テーブルに仰向けで撮るポーズ
セクシーだ
彼女も脳内で何かを想像しているのだろうか
頬が赤らみ、目元は熱を帯びる
都度都度、ストップ!と声をかけ姿勢を固定してもらい写真を撮る
どのくらいの時間なのだろうか
撮影の合間合間にカフェで聞いた話を思い出していた
北の海の地域で育ち、昆布を広げていたこと
昆布は滑るらしい
力がいるのだそうだ
「ご自分では男性と女性とどちらだと思うんですか?」
思い切って尋ねた
「どちらも演じている感じなんですよ。それぞれに」
男性として家族の中で生きた時間も彼女だろうし
おしゃれをし綺麗に装い歩く自分も彼女だろう
撮影をしながら見つめると
その人はその人として生きていることが感じられる
撮影の合間にスマホで自分を撮っていた
彼女の目には画面の向こうの人たちが見えているのだろう
撮る姿が、「アタシここにいるよ」
そう言っているようで
思わずシャッターを切った
ここにいるよ
それに反応した私がいる
あとは作品に描いていくだけだ