「パレスチナ あたたかい家」展に向けて描いた9枚のうち、最後の一枚を昨日購入いただけた。
今回の9枚は誰かにとっての個人的な、とてもパーソナルなものになってほしいと思い描いていた。なのでそれぞれに気に入ってくれた方々にとって意味がある一枚になっていることを願っている。
最後の一枚について小さな物語を伴って購入いただいたので記録しておきたい。
「あ、これかわいい!」
とある方が私の作品を手にされた。この方は10年近く定期的なお付き合いがある方で、仮にMさんとしておく。
Mさんには数名のそれぞれ成人されたお子様がいる。10年近いお付き合いの中でいろんなお話を聞いてきたが、中でもご自分のお子様について話されるのをお聞きすることがしばしばあった。
特に1番目のお子様の成長期にはずいぶん悩まれ、Mさんの心を砕かれることがあったようだ。その子とは対照的に、あるお子様とは仲が良く一緒に出かけたり、いろんな話をしてなんのトラブルなくやれているのに、と言われていたことも記憶していた。
ごちゃっと色々なものがある中で、すっと私の作品に目が行ったMさんは、作品を手にされると、これは販売されているのか聞かれた。
そうだ、と答えて、ついでに神戸マイクロキャンバスという社会循環型画材の話を少しお伝えした。また、その画材を使って今回は「自由の翼」をイメージして描いたことも。
Mさんは少し沈黙されたあと、少し作品を手にして眺めながら、これ欲しいかもというようなことを言われた。そしてこれは「今の自分から見えるあの子にぴったりなのだ」と付け加えられた。
Mさんにとって一番の悩みであったお子様は、高校卒業後遠方へ就職されて一人暮らしを始められ、今では関東近郊の企業の就職したのち元気に生活されているのだそうだ。「あの子が結果的には一番普通(就職して一人暮らしして)の道を歩いているんですよね。」
対して、仲良くやってきたお子様とはこの3年ほどほとんど会話がなかったのだとか。「反抗期がないと思っていたのですが・・・」
何を考えているのか、今では話すことがなくなってしまったお子様だが、しかし今年の母の日に、自然に一緒に食卓についてくれた。このことをきっかけとして、そのお子様からMさんはこれまでとは違う変化を受けっている。
「なかなかうまくいかない数年だったから、あの子にとって必要な時間だったんだと思います。」
Mさんはそう言葉を紡がれた。親子といえども他者で、その線引き、自分が何者であるかを知るために、離れる時期が必要だったんだろうと。
「この作品はまさに自由に羽ばたいていいんだよ、とあの子に伝えたい私の視点と重なるんですよ。」
今年のお誕生日に贈りたいのだと教えていただいた。もう一つ絵本を用意しており併せて贈るとのこと。
軽く包んでお持ち帰りいただいたあと、自分は少し、そのお子様のことを想像してみた。 贈られたものに対して大きなリアクションをされるだろうか、それともそっけない会話で終わるだろうか。
どちらであってもMさんが届けたかったメッセージをその方はきっと受け取られるだろう、と。
もしあの作品がその方の部屋に飾られ、その方がぼんやりと作品を眺めながら自分が持っている自由な翼を想像されるとしたらとても嬉しいことだな、なんて。
誰にとっても、自分の道を生きることは葛藤や悩みなしには歩けない。悩みが深くうっかりするとそのまま立ち上がれなくなって生きること自体諦めてしまうことだってある。でも、その苦しい時期を目を離さずといって干渉するでもなく見守り続けるMさんの存在が、お子様にとってはいずれ大きな支えだったことがわかる日が来て欲しいな、いや来るよな。

最後まで読んでくれてありがとう。小さな作品と語ってくださったMさんを記録したくて書きました。
感想などはお気軽に👉 miranartworks@me.com